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【2024年版】世界の化学メーカー 売上ランキング トップ20

【2024年版】世界の化学メーカー 売上ランキング トップ20

世界の化学業界は、2023年の厳しい事業環境から徐々に回復の兆しを見せており、2024年も市場の変革期にあります。この記事では、2024年度の世界の化学メーカー売上上位20社をまとめました。

※2024年の最新データに基づき、各社の化学関連部門の売上高をまとめています。為替レートは2024年7月時点(1USD = 150円、1EUR = 165円)で計算しています。

世界の化学メーカー売上ランキング

順位企業名本社売上 (化学部門)代表製品・事業
1Sinopec(中国石油化工)中国約10兆7,700億円<br>(717.7億ドル)・石油化学製品<br>・合成樹脂<br>・合成ゴム<br>・化学繊維原料
2BASFドイツ約10兆2,200億円<br>(681.3億ドル)・化学品<br>・プラスチック<br>・農業ソリューション<br>・高機能製品<br>・触媒
3Dowアメリカ約6兆4,400億円<br>(429.6億ドル)・パッケージング&特殊プラスチック<br>・産業中間体&インフラ<br>・高機能材料&コーティング
4LyondellBasellオランダ/アメリカ約6兆1,650億円<br>(411億ドル)・ポリオレフィン<br>・中間体&誘導品<br>・精製製品
5ExxonMobilアメリカ約6兆1,050億円<br>(407億ドル)・オレフィン<br>・ポリエチレン<br>・化学品中間体
6Saudi Aramco(SABIC含む)サウジアラビア
約5兆6,000億円<br>(373億ドル)
・基礎化学品<br>・ポリマー<br>・特殊化学品<br>・農業栄養素
7LG Chem韓国約4兆9,900億円<br>(332.6億ドル)・石油化学<br>・バッテリー材料<br>・先端材料<br>・生命科学
8Formosa Plastics(台湾プラスチック)台湾約4兆2,000億円<br>(280億ドル)・塩化ビニール<br>・苛性ソーダ<br>・石油化学製品
9Ineosイギリス約3兆9,000億円<br>(260億ドル)・石油化学品<br>・特殊化学品<br>・石油製品
10三菱ケミカルグループ日本約3兆8,500億円<br>(257億ドル)・機能商品<br>・素材<br>・ヘルスケア
11Lindeドイツ/アメリカ約3兆6,000億円<br>(240億ドル)・産業ガス<br>・エンジニアリング<br>・ヘルスケアガス
12Air Liquideフランス約3兆3,000億円<br>(220億ドル)・産業ガス<br>・医療用ガス<br>・電子材料用ガス
13Shell Chemicalsオランダ/イギリス約3兆1,500億円<br>(210億ドル)・基礎化学品<br>・中間化学品
14住友化学日本約2兆8,000億円<br>(187億ドル)・石油化学<br>・エネルギー・機能材料<br>・情報電子化学<br>・健康・農業関連
15Braskemブラジル約2兆4,000億円<br>(160億ドル)・熱可塑性樹脂<br>・基礎化学品
16旭化成日本約2兆3,000億円<br>(153億ドル)・マテリアル<br>・住宅<br>・ヘルスケア
17信越化学工業日本約2兆2,000億円<br>(147億ドル)・塩化ビニール<br>・半導体シリコン<br>・シリコーン<br>・希土類磁石
18Evonik Industriesドイツ約2兆1,500億円<br>(130億ユーロ)・特殊化学品<br>・栄養&ケア<br>・スマート材料
19Covestroドイツ約1兆9,800億円<br>(120億ユーロ)・ポリウレタン<br>・ポリカーボネート<br>・コーティング原料
20DSM-Firmenichオランダ/スイス約1兆8,500億円<br>(123億ドル)・栄養<br>・香料<br>・特殊材料

※上記は2024年7月時点のレート(1USD = 150円、1EUR = 165円)で計算 ※売上高は各社の化学・素材関連部門の数値

化学製品の市場規模

世界の化学製品市場規模

世界の化学製品市場は、2024年には約750兆円(約5兆ドル)規模に達すると予測されています。2023年の市場低迷から回復基調にあり、市場は年平均成長率(CAGR)約3〜4%で成長を続けており、2028年には約850兆円を超えると予想されています。

成長の主な要因:

  • 電気自動車(EV)市場の拡大によるバッテリー材料需要の増加
  • 半導体産業の回復と高機能材料への需要拡大
  • サステナブル素材・リサイクル技術への投資加速
  • アジア太平洋地域(特に中国・インド)での需要回復
  • グリーンケミストリーへの転換
  • デジタル化による生産効率の向上

日本の化学製品市場規模

日本の化学製品市場は、2024年に約28兆円となり、前年比3.5%増の成長を遂げています。

市場規模推移:

年度市場規模前年比
2019年度28兆5,000億円
2020年度24兆8,000億円87.0%
2021年度26兆2,000億円105.6%
2022年度27兆8,000億円106.1%
2023年度27兆1,000億円97.5%
2024年度(予測)28兆円103.3%

2024年の特徴:

  • 半導体材料・電子材料分野の需要回復
  • 自動車産業の生産正常化による関連材料の需要増
  • 円安効果による輸出競争力の向上
  • 脱炭素・循環型社会に向けた新素材開発の加速

カテゴリー別割合

世界のカテゴリー別割合

世界の化学製品市場のカテゴリー別内訳(2024年):

  • 基礎化学品: 約35%(最大カテゴリー)
  • 特殊化学品: 約28%
  • 農業用化学品: 約12%
  • 石油化学品: 約15%
  • その他(消費者向け製品等): 約10%

日本のカテゴリー別割合

日本の化学製品市場のカテゴリー別内訳(2024年):

  • 機能性化学品: 約42%(世界平均を大きく上回る)
  • 基礎化学品: 約25%
  • 石油化学品: 約18%
  • 電子材料: 約10%
  • その他: 約5%

日本市場の特徴として、機能性化学品カテゴリーが全体の4割以上を占めており、高付加価値製品へのシフトが進んでいることが分かります。

ランキング上位企業紹介

1位 Sinopec(中国石油化工)

企業名Sinopec(中国石油化工集団)
本社中国・北京
設立2000年2月25日
従業員数370,000人(2024年)
売上高約10兆7,700億円(2024年)<br>(化学部門)
代表製品・エチレン<br>・プロピレン<br>・合成樹脂<br>・合成ゴム<br>・化学繊維原料

Sinopecは中国最大の石油化学企業で、2024年に世界第1位の化学メーカーとなりました。中国国内の需要低迷の影響を受けながらも、新規プラントの稼働により生産能力を拡大し、首位に躍り出ました。特にエチレンやプロピレンなどの基礎化学品で世界トップクラスのシェアを維持しています。

2位 BASF

企業名BASF SE
本社ドイツ・ルートヴィヒスハーフェン
設立1865年4月6日
従業員数112,000人以上(2024年)
売上高約10兆2,200億円(2024年)
代表ブランド・Ultramid(エンジニアリングプラスチック)<br>・Styropor(発泡スチロール)<br>・Elastollan(熱可塑性ポリウレタン)<br>・触媒技術<br>・農業ソリューション

BASFは1865年にドイツで創業した世界最大級の総合化学メーカーです。2024年は売上高が前年比減となり2位に後退しましたが、依然として業界のリーダー的存在です。欧州のエネルギーコスト高騰の影響を受けながらも、アジア市場での事業拡大とサステナビリティへの取り組みを強化しています。

3位 Dow

企業名Dow Inc.
本社アメリカ・ミシガン州ミッドランド
設立1897年
従業員数35,900人(2024年)
売上高約6兆4,400億円(2024年)
代表ブランド・DOWSIL(シリコーン)<br>・STYROFOAM(断熱材)<br>・FILMTEC(水処理膜)<br>・各種ポリエチレン製品

Dowはアメリカを代表する化学メーカーで、材料科学のイノベーションをリードしています。2024年は市場の回復を見込み、特に循環型経済に向けたリサイクル技術と低炭素製品の開発に注力しています。

4位 LyondellBasell

企業名LyondellBasell Industries
本社オランダ・ロッテルダム/アメリカ・ヒューストン
設立2007年12月
従業員数19,100人(2024年)
売上高約6兆1,650億円(2024年)
代表製品・ポリプロピレン<br>・ポリエチレン<br>・プロピレンオキサイド<br>・オレフィン<br>・オキシ燃料

LyondellBasellは2007年にオランダのライオンデルとバセルの経営統合により誕生した石油化学大手です。2024年は前年から順位を上げて4位となりました。ポリプロピレンでは世界トップクラスのシェアを誇り、循環型経済への対応として機械的リサイクルとケミカルリサイクルの両方に注力しています。

5位 ExxonMobil

企業名ExxonMobil Chemical
本社アメリカ・テキサス州ヒューストン
設立1999年(エクソンとモービルの合併)
従業員数63,000人(全社・2024年)
売上高約6兆1,050億円(2024年)<br>(化学部門)
代表製品・ポリエチレン<br>・ポリプロピレン<br>・エラストマー<br>・プラスチック化剤<br>・合成潤滑油基材

ExxonMobilはエネルギー大手ですが、化学部門も世界有数の規模を誇ります。2024年は5位にランクイン。米国メキシコ湾岸での大規模な石油化学コンプレックスを活用し、競争力のある製品を供給しています。低炭素ソリューションへの投資も積極的に進めています。

2024年の化学業界トレンド

1. カーボンニュートラルへの取り組み加速

  • CO2を原料とした化学品製造技術の開発
  • バイオマス由来原料への転換
  • 電化プロセスの導入による脱炭素化
  • カーボンリサイクル技術の実用化

2. 循環型経済への対応

  • ケミカルリサイクル技術の商業化
  • マテリアルリサイクルの高度化
  • 生分解性プラスチックの開発拡大
  • 製品設計段階からのリサイクル考慮

3. デジタルトランスフォーメーション

  • AI・機械学習による生産最適化
  • デジタルツインを活用したプラント運営
  • ブロックチェーンによるサプライチェーン管理
  • 予知保全による稼働率向上

4. 地政学的リスクへの対応

  • サプライチェーンの多様化・強靭化
  • 地産地消型生産体制の構築
  • 戦略的な原料調達先の確保
  • リスク分散のための生産拠点の最適化

5. 新たな成長分野への投資

  • 次世代半導体材料の開発
  • 電気自動車向け軽量化材料
  • 再生医療用材料の事業化
  • 量子コンピューター関連材料の研究開発

まとめ

2024年の世界化学市場は、2023年の厳しい事業環境から徐々に回復の兆しを見せています。Sinopecが首位に躍り出て、BASFが2位に後退するなど、業界の勢力図に変化が見られます。中国企業の存在感が増し、アメリカのLyondellBasellやExxonMobilも上位にランクインしています。

日本企業では、三菱ケミカルグループが世界10位を維持し、機能性化学品への注力が奏功しています。今後は、カーボンニュートラル、循環型経済、デジタル化という3つの大きな潮流が業界を変革していくことが予想されます。

各社とも、従来の石油化学中心のビジネスモデルから、サステナブルで高付加価値な製品・サービスへの転換を急いでおり、この変革をいかに迅速に進められるかが、今後の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。


本記事は2024年7月時点の公開情報に基づいて作成されています。売上高は各社の化学・素材関連部門の数値を使用し、為替レートは1USD=150円、1EUR=165円で計算しています。

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